渾沌(こんとん)は、中国神話に登場する怪物・妖怪の1つです。
天地開闢の頃に生きていた四凶の一つとされ、その名の通り、混沌(カオス)を司ります。
道教の世界においては、「鴻均道人」という名前で擬人化されることもあり、また『荘子』ではたとえ話に、帝の名前として出てきます。
妖怪としての渾沌は、犬のような姿をして、長い毛が生えており、爪の無い脚は熊に似ている妖怪です。
渾沌には目がありますが見えてはいませんし、耳もありますが聞こえてはいません。
脚もありますが、渾沌はいつも自分の尻尾を咥えてグルグル回っているので前に進むことは無く、いつも空を見て笑っていたとされています。
さらに、善人を忌み嫌い、悪人に媚びるといわれています。
まさに「よくわからない」、「混沌」そのものです。
一方、思想書『荘子』のよく知られたエピソードとして、「目・鼻・耳・口の七つの孔は無いけれどすべてを知っていた帝(神)」として、渾沌が登場しています。
南海の帝と北海の帝は、中央の帝・渾沌がよくもてなしてくれた恩に報いるため、何でも知っている渾沌がよりいっそうモノゴトを知ることが出来るよう、あるいは人間らしくしようとして渾沌の顔に七つの孔をあけたところ、渾沌は死んでしまった…というお話です。
この説話では、物事に対して無理に道理をつけてはいけない、あるいは余計なおせっかいは自然を台無しにしてしまうなど、数多くの解釈がなされています。