元始天尊は、仙界の盟主にして、道教の最高神です。
また、霊宝天尊（太上道君）、道徳天尊（太上老君）と並ぶ三清の一柱とされます。
天上界の玉清境に住むといわれている、「道」の教えが具現化した存在です。
『随書』経籍志によると、元始天尊は太元…すなわち全ての物事よりも先に誕生した常住不滅の存在であり、天地再生の際に人々に道を説いて救済を与える(開劫度人)とされています。
道教では、今も多くの神々が信仰されていますが、それらの神々の頂点に位置しているとされています。
道教の世界観では、天地は幾度となく壊れ、また形成されるという循環を繰り返していると考えられていますが、元始天尊はこれと無関係に生き続けるとされています。
しかし、象徴的存在の為か、神話としての具体的なエピソードは、他の神話の最高神と異なり、ほとんど用意されていません。
また、経典によっては、創世神「盤古」と同一とするものもあります。
なお、日本でも親しまれている中国の物語「封神演義」では、闡教(せんきょう)・崑崙山を治める教主として登場し、弟子の姜子牙(太公望呂尚)に封神計画を任せるという重要な役割を担っています。